2025年7月30日 ― 東京(日本)・ミシガン州アナーバー(米国)
北大発の核医学スタートアップAMS、米ミシガン大学発の医療機器ベンチャーM3D、および東京電力ホールディングス株式会社の100%子会社である東京パワーテクノロジー株式会社(TPT)は、核医学治療における放射線管理の高度化と患者スループット改善を目指し、戦略的パートナーシップを締結しました。
本提携においては、AMSとTPTが共同開発中の放射性核種吸着処理システム「BSL-177」と、M3Dが開発した小型・高精度な3D放射線可視化カメラ「RAVIN CAM」を統合したソリューション提供を行います。これにより、患者の体内残留放射性核種の可視化、病室内の放射線分布評価、院内の高線量エリアの迅速な特定などを実現し、核医学施設における「見える・除く・流す」一体型の放射線マネジメントを可能にします。
技術概要と現場課題へのアプローチ
BSL-177は、177Lu標識放射性医薬品投与後に患者から排泄される放射性排水を鉛遮蔽された吸着カラムで処理し、排水中の放射性核種を効率的に除去する世界初※の臨床対応システムです。177Lu(物理的半減期6.647日)の99%減衰に相当する線量低減には通常約44日を要しますが、BSL-177により放射能を短時間で同等レベルまで低減することが可能です。BSL-177は自動運転により放射性排水を処理するため、作業者の被ばく低減にも貢献します。現在、同システムは国立がん研究センター中央病院において、177Lu製剤治療後の排水処理に関する実運用下での検証が進められています。
一方、RAVIN CAMはCZT(カドミウム・亜鉛・テルル)半導体を搭載し、30〜662keVの放射線をリアルタイムで3D可視化するポータブル機器で、ベッドサイドでの残留核種や漏洩(extravasation)評価、トイレ・床面の線量チェックに活用可能です。米国では退院基準確認の迅速化にも貢献しています。
M3D’s RAVIN CAM
Lu-177 in patient bathroom after radio-nuclide therapy treatment.
Patient Monitoring
Lu-177 Patient
Lu-177 in patient
bathroom after
radio-nuclide
therapy treatment.
AMS’s BSL177 System
Waste & Isotope ID
現場への期待と展望
統合ソリューションは、治療後患者の早期退出や看護・清掃スタッフの被ばくリスク軽減、インフラ未改修での患者スループット向上に資するものであり、厚生労働省通知や日本核医学会ガイドラインに沿った安全管理体制の構築支援を目指します。
AMS CEO・菅原雄一郎氏は次のように語っています:
「RAVIN CAMは、放射線の空間分布、核種の種類、線量強度をリアルタイムで視覚化できる、これまでにない放射線管理ツールです。BSL-177との連携により、規制の厳しい日本の核医学施設においても、“見て確認しながら核種を確実に吸着処理する”という、直感的かつ合理的な運用が実現します。さらに、施設内での不明核種の発見時や、放射性医薬品投与後の患者急変時の初動対応といった緊急用途においても、本ソリューションの新たな価値提供として期待されます。」
M3D CEO・Michael Hopkins氏は次のように述べています:
「RAVIN CAMは唯一、現場でリアルタイムに放射線を可視化できる携帯型3Dカメラであり、BSL-177との親和性が高い商品です。AMSおよびTPTとの協業により、日本の核医学治療の安全性・効率性の向上に大きく寄与できると信じています。」
今後の展開
BSL-177 とRAVIN CAMの統合ソリューションは、日本の核医学治療施設における次世代標準支援モデルとしての普及が期待されており、今後、全国の中核病院を中心に導入が進む見込みです。
※「世界初」は、177Lu標識放射性医薬品治療後の排水処理において、鉛遮蔽型吸着システムとしての臨床実装を前提としたものです(当社調べ)。
■ RAVIN CAM
•高精度CZTセンサー(カドミウム・亜鉛・テルル半導体)搭載
•可視光カメラと統合されたリアルタイム3Dガンマ線イメージ
•小型・軽量(約2.3kg)で医療現場に適した設計
特性 |
内容 |
放射線検出範囲 | 30 ~ 662 keV(99mTc, I-123, Lu-177, F-18など対応) |
エネルギー分解能 | 1.1% FWHM(662 keV) |
最小検出アクティビティ | 140 keVで1μCi(37kBq)@1m |
距離対応 | 最大15m離れても放射線源を画像化可能 |
表示 | LCD上に可視画像 + 放射線ヒートマップをリアルタイム合成表示 |
測定精度 | ±10%(137Csにて) |
■ BSL-177
•世界初の臨床対応型の放射性排水処理システム。
•Lu-177の約44日分の自然減衰(約1/100)に相当する放射能低減を数時間で実現。
•特別な工事なしで院内インフラに容易に導入可能。
寸法 |
内容 |
寸法 | 900W × 500D × 850H(mm) |
質量 | 約100 kg |
電源 | 100V AC、50/60Hz、定格1500W以内 |
処理速度 | 5~10mL/分 |
遮蔽構造 | 鉛遮蔽(6面) |
操作系 | スイッチ一つによる自動送液・吸着処理 |
吸着カラム | 吸着処理ごとにカラムを交換 |
※本リリースに記載されている製品は、日本国内において医療機器としての承認を受けていない開発中の機器を含みます。
お問い合わせ先:
AMS – info@ams-plan.com
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